講演録第6弾「印刷の過当競争時代を生き抜く」

3.成功に踊らず次の一手へ-1

それでは本題に入ります。弊社で現在取り組んでいること、これから行わなければならないことをご紹介すれば、今回のテーマ「先進的な企業経営」に結び付く内容になると思われますので、その一部を本日はお話しいたします。弊社は何も特別なことを行っているわけではありませんし、特殊な機器や設備を使って、弊社でしかできない仕組みで成り立っているわけでもありません。日々の仕事の中で、基本を押さえ様々な技術を高めていただければ、きっと皆さんも同じことができると感じています。


弊社には今から13年ほど前に始めた印刷通販という事業があります。1995年にCTP、1999年に菊全判8色両面印刷機の導入を終え、理想的なハード環境が整いました。更に、今後DTP関連のソフト導入が様々な業界で拡大するという現実を組み合わせ、データ入稿というこれまでにはない新しい事業形態で、全国展開を視野に入れた仕事が可能だと、確信を持って立ち上げた事業です。

我々がこのビジネスを立ち上げた当初、この仕組みに合う仕事はどこにあるのか探しましたが、大方の予想通り、仕事のあった先は同業の印刷会社とデザイン会社でした。この両業界に対し徹底的にアプローチを仕掛けた結果、予想を上回る仕事を受注することに成功しました。当時、現状認識のできていない同業者からは「価格破壊だ」と批判されたことを今でも思い出します。しかし、弊社が行った戦略はプロセスカットで得た利益をお客様に還元するという極シンプルなものでした。現在の印刷通販で行われている安値競争故の意味の通らない料金体系とは一線を画していました。その当時は今は目にすることのない版下や製版フィルムがあって、植版機で面付けされた刷版を作る等、現在ではなくなったいくつもの工程を、業界に先駆けてプロセスカットしたことで、これまでの売値から二から三割は印刷物を安く提供することができました。しかし、現在は利益が伴わない低迷するビジネスの一つになっていると言わざるを得ません。このような状況下、自社のビジネスをどの方向へ向けて舵を切ればいいのか更なる決断が求められています。