講演録第6弾「印刷の過当競争時代を生き抜く」

2.「胆管ガン」問題から見える課題-2

更なる課題はローラー洗浄の回数が増える「特色」をどう扱えば良いのかということです。今日の印刷技術の進化は、プロセス4色による色再現の領域を格段に広げています。この技術を活用して特色を使わずに色再現が可能となったことをお客様にお伝えし、理解を高めていただくための行動を、それぞれの企業が起こさない限り現状を打破することはできません。これを実現すれば我々にも、そしてお客様にも、合理性に裏付けされた様々な利点のある仕組みを提供することができます。今こそ真剣に考え、実現に向けた行動を取らねばなりません。

この「胆管ガン」の問題が抱える不安の一つに、将来を担う若者が我々印刷業界を危険視して就職先に選ばなくなる可能性があるということです。こんな話があります。印刷営業職としての採用内定者が、この問題で就職を辞退してきたそうです。一連の胆管ガン報道による印刷業界に対する不安の現れと言えます。このような風評被害は益々拡大する可能性があります。我々の業界はそんな危険な業界なのでしょうか。そうではないということを理解していただくために、ここでしっかりとした対策を打ち、歯止めを掛けなければなりません。

今回の問題の主たる要因は、自動化されていない手動の設備で、ブランケットの洗浄や特色インキを変えるために行うローラー洗浄の際、揮発性有機溶剤を狭い部屋の中で使用し、それが充満した環境の中で長時間作業を行っていたことです。印刷業界のみならず、様々な業界で使用されているあらゆる化学薬品は人体にとっては有害な化学物質を含んでいます。だからこそ正しい取り扱いが求められます。新潟県印刷工業組合でも、有機溶剤作業主任者の講習を受け、危険物に対する認識と取り扱いに対する知識を高めてもらうことが必要であると考え、受講へ向けた情報の提供を行っています。有機溶剤の取り扱いに対し、今後どういった作業環境を作るべきかを理解する良い機会になると考えております。

先程も申した通り、我々が作業で使用している化学薬品の全てが危険性のある化学物質を含んでいると考えねばなりません。印刷業のこれからあるべき姿を考えた時、私達は今ある何を改め、今後、何を目指してどこへ向かって進んでいけば良いのか、今起きている様々な実例を道標とするために、その可能性を精査し判断しなければなりません。その実例の一つとして、現在弊社が取り組んでいることを本日ご紹介しますので、お役に立てるかどうか定かではありませんが、何か感じる部分がありましたら是非ご活用いただければと思います。