講演録第3弾「- そんな話聞いたことがない - だから非常識なのです」

4.常に検証、常に工夫-2

吉田 まったくその通りです。私どもは物事を複雑に考えずに、もっとシンプルに考えようと常に言っています。確かに湿し水を抑えた結果、印刷物が汚れます。しかし汚れで問題になるのは、湿し水だけではなく、ブロッキングの問題があります。ブロッキングがどのレベルで起きてくるのかということは、ブロッキング防止パウダーの量にも影響しますし、湿し水の量も影響します。

この部分を計測するために、当社では本刷り開始直後の何10枚かは理想とするパウダー量と湿し水の絞り量で実際に印刷してみます。それより上に重なる部分は、これまでと同じ条件で印刷すれば良いじゃないですか。その結果、1番下の部分がどういう状況になったのか確認すれば良い。

そんなわけで、当社では本刷りの1番下の状況を常に把握できるようオペレーションしてきました。印刷オペレーターも、後加工の断裁オペレーターもブロッキングしているかどうかの情報を逐次フィードバックして、この印刷結果であればまだ余裕がありそうだからパウダーをもっと減らせないか、という取り組みを日々積み重ねてきました。

このような工夫を積み重ねなければ乾燥促進印刷は実現できません。この工夫なくして、単に水を絞れば出来ると頭だけで考えると、リスクが高くてやれない。ならばそのリスクを軽減するための様々な工夫を考えれば良いのです。

今日は、皆さんに1つお土産を持ち帰っていただきたいと思っています。

印刷する時に紙粉がブランケットに付着することがありますので、その紙粉を80パーセント除去する方法というのがあるんですよ。それを行った時と行わない時では、紙粉の残り方が全然違います。

印刷機にセットする前に、4方の辺を清掃用に売られているマイクロファイバーで拭くんです。水を固く絞って、それで1回拭いてやると紙粉が8割方は取れます。

こんな風に、日々「何か違うやり方はないか?」と試して、良い結果が得られたものについては、社内全体で取り組み、こうして業界の皆さんにお話しもします。

私どもは皆さんに情報を提供しますので、私も困った時には皆さんにお尋ねしますので、その時には、どうぞ包み隠さずにお話いただければと願っていま す。印刷業界は吉田印刷所1社で、あるいは皆さんの会社1社で成り立つはずがありません。多くの皆さんとこの業界を支えていかなければなりません。どうぞ 共有できる部分はみんなで共有して、より良い方向に向かっていければと思っています。