講演録第2弾「非常識が企業を進化させる - 全体最適は社会も変える -」

13.多能工が部門の垣根をなくす-2

本田 御社の場合は、印刷加工は多能工なので1つの工程としてお考えということですけれども、よく考えると製版を含めたプリプレス部門はありませんよね。それはどうしてでしょうか。そういうお考えがないということなんでしょうか。


吉田 ありません。当社がカラーの印刷を始めたのは、そんなに歴史の古い話ではありません。CTP導入の1995年以前の私どもの主な仕事内容は文字物です。あるいはカラー以外のチラシ、伝票、名刺、葉書、封筒、こういった仕事がほとんどです。カラーの仕事が非常に少なく、その当時のオペレーターは、今はもう殆どおりませんが、「うちの仕事が全てカラーになったらどんなに楽だろうね」という話をしていたのを思い出します。そんな状況ですから、最初からカラーという部分は手薄だったんです。

製版もそれほど充実した形での製版部門ではなかったと言えますし、DTPの仕組みになってフィルムセッターを導入した時も、技術のトレンドはフィルムレスのCTPと考えておりましたので、当社はA3のトンボがつくフィルムセッターのみで、頁物は殖版機で頁掛けして、全判のセッターは導入しませんでした。

カラーでA全判ポスターの依頼がくると、製版会社さんにフィルムを持ち込んで目伸ばししていただいて使っていた。そんな状況でしたので、カラー製版という仕組みは元々なかった会社だったのです。


本田 私は今の理由は謙遜されているのかなと思う部分があるんですけれども。(笑)

先程の、印刷と加工は一連の作業とお考えというところで、営業さんが発注者の方と校正されて校了になるというやりとりの流れからすれば、「別に校了を取るまでは営業側でやればいいんじゃないの?」と。それが印刷会社の中でもデータの責任範囲を明確にすることにもなる。

一般的には、その間に製版などが入るので、営業があって製版があって刷版があって印刷があってという中で、それぞれの責任分担が曖昧な部分があったんですよね。でも吉田印刷所様は、完全に校了になるまで営業側で全部準備されて、校了になったデータが出来たら、後は工場ですね。