講演録第2弾「非常識が企業を進化させる - 全体最適は社会も変える -」

8.お客様の望みなら可能にするのが「あたりまえ」-3

本田 今のお話の社長のその視点ですね。技術の問題もさることながら、着目された視点というのが、正に先程おっしゃった吉田印刷所様が考える全体最適の「全体」の範囲を表していると思います。

今お話しされたのは、あくまで発注者様への「こうされた方がより良いのではないですか」という提案が含まれているということですね。自社がコストダウンするためだけではなくて、お客様の視点に立って出てきた発想ということで、先程のお話の全体最適の範囲というのが、今ここで明確に裏付けられたのではないかと思います。


吉田 しかし、ここではこれまでの価格との比較方法が問題になります。

例えば、今まで使っていた印刷物の単価が1部100円としましょう。その100円という単価で作られた印刷物が、2割から3割、一度も使うことなく廃棄されたら、100円が130円になり、140円となり、更に管理料、保管料、廃棄する費用もかかるとなると、150円あるいは160円になるかもしれません。

当社が「ライトプリント」をご提案しますと、ほとんどのお客様が「今までは100円だけれど、吉田さんの仕組みを導入するといくらになるんですか」と尋ねられます。金額を単純比較しようとされているわけですが、これまでの単価が本当に100円だったのかが明らかになりませんと同じ土俵には上がれませんし、正当なコスト評価を得ることが出来ません。

ですから、私どもはこの無駄の部分を洗い出します。提案内容によっては、これまで掛かっていた在庫費用など、様々な間接コストが圧縮される、あるいはコストそのものがなくなる場合もあるからです。本来の単価や普段は表に出てこない経費がいくらだったのかを解明し、それらを加味したトータルコストで比較していただきたいとお願いしています。

この理解が得られませんと、先程申し上げましたように同じ土俵での話にはなりません。そもそも捨てる印刷物があること自体が損失そのものであり、環境負荷になるわけですから、今お話し申し上げたことは、経営と環境を真剣に考えている企業であれば十分にご理解いただけることだと思っています。

今の印刷業界では、一度も使われることなく捨てられる印刷物でも、そこに売り上げと利益が含まれているならば、見て見ぬふりが常識であり、あたりまえとなっています。

しかし、これでは本来あるべき姿の全体最適には至りません。これからは勇気を持って、「捨てる印刷物をなくすこんな仕組みがありますが、いかがでしょうか?」と、ご提案することが肝要であり、それが正義なのではないでしょうか。


本田 これは発注者様のエコロジーおよびエコノミーもお考えになっている内容ではないでしょうか。正に、お客様の視点に立った提案だと私は思いました。