講演録第2弾「非常識が企業を進化させる - 全体最適は社会も変える -」

4.自社だけではない、お客様も含めた全体最適化-1

本田 この業界では1990年過ぎから「DTP」という言葉が「デジタル化」と呼ばれて進んできましたが、それはもしかしたら、IT化を単なるデジタル化としか捉えていなかったのかもしれませんね。

社長がおっしゃったように、IT化というのは、単なるデータがデジタルになったということではなくて、物事の進め方においていかにうまく活用するかということだと思うのです。どちらかと言うと印刷業界は受け身で、データがデジタルだから対応していたという流れでしたが、工程の流れ、物事の流れの中に落とし込んでいくべきだというお考えで宜しいでしょうか。


吉田 はい、それが全体最適ですよね。


本田 早速、全体最適という言葉が出てきました。これも言葉としては数年前からよく言われています。悪く言うと、何かあったらなんでもすぐ「全体最適」の一言で済ませてしまう場合があるんですが、実は非常に奥が深く、捉え方も色々あって、本質を掴んでおかないと錦の御旗になってしまう、掛け声だけで終わってしまうところがあるんです。一言、全体最適に関する社長のお考えを教えていただけますか。


吉田 これから見学していただく印刷工場はCTPが印刷機械のすぐ横に置いてあります。以前はプリプレス工程にあった設備を印刷工程に持ってきました。その際に人も一緒に付いてきてもらい、面付けおよび出力までの作業は全て印刷の現場で行っています。

これは単に印刷工程とプリプレス工程の一部分を統合したという話ではなく、完全一致の融合を目指した結果、現状の形になりました。CTPのオペレーターは時間がある時は印刷工程のサポートをし、尚且つ、製本工程のサポートもします。逆に印刷のオペレーターはCTPの出力で手が足りないという時はあたりまえのように刷版を出力します。

全体最適にとって、この融合が重要な意味を持つのではないかと思っています。


本田 社長が日頃お話になる「全体最適」の全体の範囲についてお聞かせください。


吉田 全体最適は、今お話ししたような自社の最適だけに留めていてはだめだと考えています。

言い方が少し上から目線のようになりますが、私たち印刷業界がこれまで行ってきたことがお客様にとって本当に諒とすることだったのか、今一度考えなくてはいけません。

「こういう印刷物の提供の仕方が、お客様や社会をも含めた全体最適に結び付くことなのか」を再考し、これまでの印刷物提供の仕組みそのものを変化させるべきだと考えています。