講演録第2弾「非常識が企業を進化させる - 全体最適は社会も変える -」

6.お客様の望みなら可能にするのが「あたりまえ」-1

本田 ITをうまく使うというお話を、もう少し深掘りしていきたいと思います。

以前、私は吉田印刷所様の改善会議に参加させていただいたことがありました。当然、社長も社員の皆さんも出席されていました。社員の方が色々な無駄の削減提案をされている中で、ある営業系社員の方が会社の営業展開に対して意見をされたんですね。ずばり吉田社長に意見をされたんです。それに対して社長も、間違えていたことは間違えていたと真摯に受け止めて、「次の展開はこうしたいが、どう思う?」とおっしゃったんです。経営者と社員のコミュニケーションの中で、皆さん本気で切磋琢磨されていました。私はその場に立ち合って非常にびっくりしたんです。

これが吉田印刷所様の理念と言いますか、百年余りの歴史の中に脈々と受け継がれ、社員の皆さんに浸透しているものなのかと思いました。4つ目のEというお話がありましたが、こういった社内環境が根本として一番大事なのだと実感しています。


吉田 当社のスタッフは誰1人として特別なことをやっているという意識を、持ち合わせていないと思います。日々の仕事の中で「他者には真似の出来ない自社にとってのあたりまえ」が、それこそ毎日あたりまえのように進行しています。

しかし、もっとスピードを上げて進化する会社にならねばならないと思っています。それには、求めに応じられないことを全て非常識と一蹴するのではなく、それがお客様の望みならば、非常識を可能とする技術力を身につけるべきだと考えています。

これからの差別化は設備依存型ではありません。当社も今回の工場を新設するにあたってハイデルベルグさんのXL105、8色機を導入致しましたが、この設備力を誇るのではなく、これで何をしようとしているかが重要だと考えています。これまで印刷業界が非常識と言って避けていた案件を新規需要と受け止め、積極的に開拓していくことが未来を拓くことになるのではないでしょうか。