講演録第5弾「今 印刷会社がすべきこと」

12.印刷の将来-2

吉田 実は、当社はこの営業をなくした会社でした。周りからは本当に営業をなくして大丈夫なのかと、訝しがられたこともありました。しかし、まだ誰も参入していなかった当時の印刷のネット販売には、これまでにはない多くの可能性がありました。それを実現するにはコストを大幅にカットした価格競争力を身に付けねばなりません。ならば、1番コストの掛かる営業をなくすという、センセーショナルな選択が当然の結果として生まれました。

今日では印刷会社に限らず様々な企業がこの分野に参入し、過剰・過当な状況が起きています。当社はもはやこれ以上の伸びはないとの判断を行いました。その判断と共に、自社の強みや誇れるところをお客様に伝える「語り部(かたりべ)」として活動する部隊を地元と東京に編成しました。この部隊には八年間現場の中で実務を学んだ元営業も取り込みました。この語り部の活動は既に1年が経ちます。

その結果は、吉田と他社の違いを理解していただけるお客様が増えてきたとこれまでになく感じております。この、他社とは違う差別化の動きが、当社にとって新しい第3の道を切り拓く重要なファクターだと思っております。今、語り部達がその思いを、一生懸命お客様に伝えているところです。

松石社長 営業の方も現場を知り尽くした方が担っている。それともう1つ、若い方がオペレーションしていますが、吉田印刷所は技術を人に依存していない。よくあるのが、うちにはこういった凄いやつがいて、こいつに任せればこんなことが出来る。そんな会社が多いのですが、吉田さんのところはそうではなくて皆さんが出来る。つまり会社に技術が根付いている。そんなところも後程見ていただきたいと思います。

最後にWeb to Printについて、最初に始められた方の責任としてお話をお伺いしたいのですが、もう止めるということで宜しいのでしょうか。

吉田 いいえ、決して止めるということではありません。もはや、これだけで利益を上げられる状況ではないということです。当社のWeb to Printの仕組みは、トクプレというサービス名で公開していますが、このトクプレに該当する仕事は、完全自動化、無人化の中で完結する仕組みを目指しています。何の相談も手助けも必要とせずに仕事が流れ、仕上がった商品がお客様の手元に届く単純で明快な仕組みを考えています。

それとは別に徹底したサポートを必要とするお客様には、当社の独自印刷プランによる営業案件として、きめ細かいサポート重視の対応を準備しているということです。

松石社長 ありがとうございました。時間が参りましたので、これを持ちましてパネルディスカッションを終了致します。