講演録第5弾「今 印刷会社がすべきこと」

6.お金を掛けず無駄を出さない弱者の選択-3

松石社長 後程工場見学で皆さんの目の前でアート紙でもコート紙でも刷了後すぐに裏返して裏面を刷り始める光景を見せていただけると思います。

私がある印刷機械メーカーの技術開発をされている方と話す機会があり、その折に吉田印刷所さんの話をして、本当にUV装置って必要なんですかと聞いてみましたら、実のところ技術があれば、紙に印刷することに対してUV強制乾燥装置は不要と本音をポロリと言われました。オフセット印刷の基本と言われる極力湿し水を絞ってインキ量も絞ることに対して、異論を唱える方はいらっしゃらないと思いますが、現実として多くの現場は違う。それは印刷会社の現場が怠慢なのか、お客様に教育が出来ていないメーカーの怠慢なのかどちらだと思われますか。

吉田 結論から言いますと、それは経営者の怠慢だと思います。経営者が未来を読み取り、自社の進むべき道に対し明確な指針を示すことが出来たなら、現場のスタッフは可能な限り、自分自身の未来のために、努力を惜しまずチャレンジしてくれることと思います。

経営者は、湿し水を絞って、インキも絞り、印刷が本来持っている適正品質の印刷物をお客様に提供することを、自らの効率と環境を改善し、新たな仕事を生み出し、市場が本来願っている求めに応えることと現場のスタッフに気付かせることが重要です。

例えばお客様が当社に許容値以上に濃度を上げて欲しいと言われたら、その結果予測される問題点を説明し理解していただくか、それでもどうしてもという場合には、危険回避のためのコストが発生することを了承していただく交渉をしております。最初にこのような理解を得るための確認と調整をしない限り、現場はいつも右往左往することになります。本日ご参加の中に印刷オペレーターの方もいらっしゃいますが、これで本当にいいのかと思うような仕事が実は結構あると思ってはいませんか。当社でも不安を抱えた仕事はゼロではありませんが、様々な調整や交渉の結果、今日では非常に少なくなったと感じています。

経営者の毅然とした決断が仕事に対する考え方や姿勢さえも変えて行き、理想とする職場を作り出すと考えています。

松石社長 湿し水を絞ってインキを絞りさえすれば0.03ミリメートルの紙が印刷できるのに、実にもったいない話ですよね。ここに参加されている企業様にも同じマシンが導入されていて片や刷れて、片や刷れないではビジネスチャンスも発想も変わってくる。これでは本当にもったいない話だと思います。

吉田 確かにもったいない話だと思います。