概要
IllustratorはPhotoshop形式のデータ(.psd)を貼り込むことができますが、貼り込むPhotoshop形式のデータを保存するときに「互換性を優先」のチェックを付けた場合と付けなかった場合で、PDF変換の結果に違いが発生することがあります。
具体的には、Photoshopデータ上に無い色がPDFで発生することがあります(※)。
この問題はIllustratorのバージョンなどによると考えられます。
Illustratorのバージョンによっては発生しないようです。
※この問題で発生するPhotoshopデータ上に無かった色が刷版・印刷上で再現される(表現される)かどうかは検証していません。
解決方法
Illustrator CS6以降の場合(Illustrator CCを含む)
Windows版のIllustrator CS6(64bit版)以降であれば、PDF変換の際に、画像のダウンサンプルを行わないようにしてPDF変換を行う。また可能な限り、PDF変換でJPEG圧縮を使用しない。
(2024/06/04追記)Mac版のIllustratorでは上記の方法では偽色が発生することがあります。
Photoshopデータを修正する場合
Illustratorへ配置するPhotoshop形式のデータ保存の際に「互換性を優先」にチェックを入れずに保存して、貼り込む。
Photoshop形式オプションのダイアログが表示されない方は、環境設定の「ファイル管理」→「PSDおよびPSBファイルの互換性を優先」を「常にオフ」にして下さい。
追記:Illustrator CC 2019まで検証(2018/10/17)
Windows 10 64bit OS環境でIllustrator CS6・CC・CC 2014・CC 2015・CC 2015.3・CC 2017・CC 2018(すべて64bit版)で再度上記検証ファイルを開き、検証してみました。
以下の表中の※1は吉田印刷所(トクプレ.)で配布しているPDF変換のプリセット、※2はIllustratorに標準で入っている「PDF/X-4」のプリセットです。
なお確認はAcrobat Pro DCの出力プレビューで目視による確認です。
Illustratorの バージョン | ※1 画像 ダウンサンプルなし ZIP圧縮 | 画像 ダウンサンプルなし JPEG圧縮 | 画像 ダウンサンプルあり 300ppi ZIP圧縮 | ※2 画像 ダウンサンプルあり 300ppi JPEG圧縮 |
---|---|---|---|---|
CS6 | 〇 | △ | 〇 | △ |
CC (17.1) | 〇 | △ | 〇 | △ |
CC 2014.1.1 | 〇 | △ | × | × |
CC 2015.2.1 | 〇 | △ | × | × |
CC 2015.3.1 | 〇 | △ | × | × |
CC 2017.1 | 〇 | △ | × | × |
CC 2018.1 | 〇 | △ | 〇 | △ |
CC 2019 | 〇 | △ | 〇 | △ |
以上のようにIllustrator CC 2018では、Photoshopファイルの保存時に『互換性の優先』チェックを入れた画像に偽色が出る問題は解決しているようです。
JPEG圧縮した場合でも目視では出ていないように見えましたが、Photoshopデータによっては元データにないカラー出る可能性が否定できないので、△としました。
あわせて、本文中の表記も変更しました。
実例
Illustrator CS4・CS5・CS6・CCを例に試してみます。
なお、画像のカラーは「C70% M50% Y20% K0%」でブラックのカラー成分は含まれていません。
これをPhotoshop形式で保存しますが、保存時に表示される「互換性を優先」にチェックを付けたものと付けないものを用意します。
Illustratorに貼り込んで、PDF/X-4保存します。
設定は以下の通り。基本は標準の「PDF/X-4」のプリセットで、画像のダウンサンプルはしない・圧縮はZIP設定で配置した画像の劣化が起こらないようにします。 (画面はIllustrator CS6ですが、CS4・CS5も同様に設定)
Illustrator CS4からPDF/X-4保存した場合
Acrobatで開いた状態。
左側が「互換性を優先」にチェックを入れたデータ、右側が「互換性を優先」のチェックを入れないデータ。
「互換性を優先」のチェック以外は、同じデータのはずですが、左右で見え方が既に違います。
Acrobatの「出力プレビュー」の機能を使用し、ブラック版だけを表示すると、無いはずのブラックのカラー成分が出てきます。
ブラックの濃度が30%を超えている部分もありました。
Illustrator CS5からPDF/X-4保存した場合(5.1も同様)
Acrobatで開いた状態。
Illustrator CS4同様に左右で見え方が既に違います。
Acrobatの「出力プレビュー」の機能を使用し、ブラック版だけを表示すると、無いはずのブラックのカラー成分が出てきます。
Illustrator CS6・Illustrator CCからPDF/X-4保存した場合
Acrobatで開いた状態。
同じように見えます。
Acrobatの「出力プレビュー」の機能を使用し、ブラック版だけを表示すると、ブラック成分はありません。
情報元
背景透明で保存した画像をIllustratorへ配置。PDF変換すると細かなドロップシャドウが発生。Illustratorデータから出力した色校正にも影が。。。解消できるらしいので一応問題なしですが,原因と対策が分かる方いませんか。 pic.twitter.com/obdYFfZXlO
— 小谷充 (@kotanidesign) July 17, 2013
モリオ (@moriwaty)さんの調査結果を基に作成しました。
まず、psdの保存時に『互換性の優先』チェックを外せば線は出ません。 TwitLonger -- When you talk too much for Twitter
他に、Adobeのスタッフの方からも類似の情報を頂きました。ありがとうございました。
不具合報告について
2013/12/02にAdobe - 製品への要望 / 不具合報告 フォームより不具合報告を致しました。
改善されることを期待します。
検証用ファイルのダウンロード
検証できるファイルをダウンロードできるようにしました。
Illustrator CS4・CS5・CS6・CCで開けるIllustratorファイルとPSDファイルです。
関連情報・参考資料
- 参考:私がX-4のことをちょっと信じられなくなった経緯(Togetter)
- 背景透明のPSDを配置すると偽色が出る(Adobe Community)