
一見シンプルな「薬袋」も、袋の形にする方法によって構造や特徴が異なります。一般的な製袋方法と、吉田印刷所独自の「四方薬袋」をご紹介します。
病院や調剤薬局で日常的に使われている「薬袋」。一見すると、紙を袋状にしただけのシンプルな製品に見えるかもしれません。
しかし、薬袋をどのように袋の形にするか、つまり「製袋(せいたい)方法」にはいくつかの種類があります。そして、この製袋方法の違いは、薬の入れやすさだけでなく、プリンターで印字するときの紙詰まりや印字品質にも関係しています。
今回は、一般的な薬袋の製袋方法と、吉田印刷所が独自に採用している「四方薬袋」についてご紹介します。
用語について
製袋方法の呼び方や細かな構造は、メーカーや製袋機によって異なる場合があります。ここでは代表的な構造をもとに説明します。
「製袋」とは?
製袋とは、その名のとおり「袋を作る」加工のことです。
薬袋の場合は、紙を折ったり、複数の紙を重ねたりして、必要な部分をのり付けすることで袋の形にします。
同じような平らな薬袋でも、どの辺を折り、どこをのり付けし、どこを薬剤の投入口にするかによって、その構造は異なります。
代表的なものとして、「二方薬袋」「三方薬袋」、そして吉田印刷所が採用している「四方薬袋」があります。
二方薬袋
二方薬袋は、薬袋の2方向をのり付けして袋状にする製法です。
例えば、1枚の紙を折り返して袋の表面と裏面を作り、左右の2辺をのり付けします。折り返した部分が袋の底になり、反対側が薬剤の投入口になります。

比較的シンプルな構造で、薬袋をはじめ、さまざまな紙袋や封筒でも応用されている考え方です。
一方で、紙を折り返したり、のりしろ部分を重ねたりする構造では、部分的に紙の厚みが変わることがあります。また、投入口の形状によっては段差が生じたり、袋を開けやすくするための「指ぬき」を設ける場合があります。
手書きで使用する場合には大きな問題にならなくても、薬袋をプリンターに通して患者名や用法などを印字する場合、こうしたわずかな段差が給紙や印字に影響することがあります。
三方薬袋
三方薬袋は、3方向をのり付けして袋を作る方法です。
代表的な構造では、表面と裏面になる2枚の紙を重ね、左右と底の3辺をのり付けし、残った1辺を薬の投入口として使用します。

紙を折り返して作る方法とは異なり、表面と裏面をそれぞれ独立した紙で構成することができます。
ただし、薬を入れるためには1辺を開けておく必要があります。製品の形状によっては、投入口付近にわずかな段差が生じる場合もあります。また、二方薬袋と同様に、指ぬきが必要になる場合もあります。
二方薬袋、三方薬袋のいずれにもそれぞれ特徴があり、使用目的や製造設備などに応じてさまざまな方法が採用されています。
吉田印刷所独自の「四方薬袋」
吉田印刷所では、二方薬袋や三方薬袋とは異なる「四方薬袋」という独自の製法を採用しています。
四方薬袋では、まず同じ大きさの2枚の紙を重ね、その上下左右、4辺すべてをのり付けします。
これだけでは完全に閉じた紙の袋になってしまいますので、表面または裏面の紙1枚だけに「スリット」と呼ばれる切り込みを入れます。このスリットが薬の投入口になります。

つまり、袋の端を開口部にするのではなく、紙面の途中に設けたスリットを投入口とする構造です。
吉田印刷所では、この製法を「フラット加工」と呼んでいます。
なぜ四方薬袋はプリンターに向いている?
薬局や病院では、薬袋に患者名、薬名、用法・用量などをプリンターで印字することがあります。
このとき問題になりやすいのが、薬袋に生じる「段差」です。
一般的な紙袋や封筒では、紙を折り返した部分や、のりしろを重ねた部分に厚みの差が生じることがあります。プリンターは、ローラーで用紙を送りながら印字します。そのため、わずかな厚みの違いでも、紙詰まりや印字のかすれにつながることがあります。
吉田印刷所の四方薬袋は、同じ大きさの2枚の紙を重ねて4辺をのり付けし、紙面に設けたスリットを薬の投入口とする構造です。袋の端に開口部を設けないため、投入口付近に大きな段差が生じにくくなっています。
フラット加工のポイント
薬袋全体をできるだけ平らに仕上げる――これが「フラット加工」の大きな特徴です。
プリンターでの通紙を考えて開発された製法ですが、表面が平らなため、薬袋に手書きで文字を書き加える場合にも、ペン先が段差に引っかかりにくいというメリットがあります。
小さな「袋」にも製造上の工夫があります
普段何気なく使われている薬袋ですが、その作り方を見ていくと、二方薬袋、三方薬袋、四方薬袋など、さまざまな製袋方法があることが分かります。
薬を入れて患者さんにお渡しするという基本的な役割は同じでも、プリンターで印字するのか、手書きで使用するのかといった使い方によって、薬袋に求められる性能も変わります。
吉田印刷所では、プリンターでの印字が普及する以前から薬袋の研究・開発を続けてきました。その中から生まれたのが、4辺をのり付けしてスリットから薬を入れる「四方薬袋」です。
毎日多くの薬袋を使用する医療現場だからこそ、紙詰まりや印字トラブルをできるだけ減らすことも大切です。
一枚の小さな薬袋にも、実際に使う現場を考えた製造上の工夫が詰まっています。