薬袋と環境問題

調剤薬局で使われる薬袋は、私たちの生活に欠かせない存在です。しかし、その薬袋の選び方が環境問題にどのような影響を与えているか、考えたことはありますか?

本コラムでは、薬袋の素材(原材料)の種類の違いや、ライフサイクル全体を通して見た環境問題について解説します。

①薬袋の素材

薬袋には主に木材を主原料とした「紙製」と石油を主原料とした「プラスチック製(ビニール・ポリエチレンなど)」の2種類があります。

「環境」や「持続可能性」という観点から薬袋を見た時、それらにはさまざまな側面があり一概にどちらが良いとは言えません。原材料の調達~製造~流通~廃棄といったライフサイクル全体のあり方によっても評価は大きく異なります。

紙は再生可能な資源の木材から作られているため、生分解性が高くリサイクル適性に優れている一方、製造時のCO2排出量はプラスチックより一般的にやや多いとされています。

プラスチックは、製造時や輸送時のCO2排出量が紙よりは少ないですが、複合素材の場合はリサイクル性が低く、石油由来のため廃棄(焼却)時のCO2排出は多くなるという傾向があります。また、適正に廃棄されずにマイクロプラスチックとなって海洋に流出した場合は生態系に悪影響を与えます。

近年、世界的に「紙化」の流れが加速しています。EU地域を中心に日本でも、プラスチック製ストローやお菓子の包装材が紙製に置き換わる事例が増えています。こうした動きは、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」にも直結し、企業のブランド価値向上にもつながっています。

一方で、紙の原料となる木(森林)の違法伐採、過度な開発による環境破壊は持続可能性を蝕む大きな問題となっています(違法伐採については国レベル・企業レベルで対応策が進められています)。

このように、どちらにもメリット・デメリットは存在するため、当コラムにおいてどちらが良いという判断はできませんが、吉田印刷所が紙製薬袋を製造するにあたって、特に「地球温暖化(CO2排出)」「森林保護」「リサイクル」という観点から意識していることをご紹介します。

②紙のエコ調達

吉田印刷所は製紙メーカーからロール紙(原反・原紙)を仕入れ、それを薬袋に製造加工して全国の調剤薬局様にお届けしています。当社工場での1年間の紙の使用量は700トン以上におよびます。

この量を身近な物と比較してみると、一般的なトイレットペーパーでは約600~700万個、A4コピー用紙では約2億枚に相当する量です。

このような膨大な量の紙を調達するにあたり、コストだけではなく、上記で挙げた3点の「地球温暖化(CO2排出抑制)」「森林保護」「リサイクル」を考慮することはとても大切なことです。

当社自身が、地球温暖化につながる違法伐採由来の用紙は仕入れないことはもちろん、取引している製紙メーカーにおいても、以下の「調達禁止5項目」を掲げて合法的で持続可能的な調達を推進しています。

  • 違法伐採された木材
  • 伝統的権利や人権を侵害して伐採された木材
  • 高い保護価値が脅かされている森林からの木材
  • 人工林、森林以外の土地利用に転換されている森林からの木材
  • 遺伝子組み換え樹木が植えられた森林からの木材

これらにより、吉田印刷所では合法的な植林木由来のチップを100%使用した紙からすべての薬袋を製造することが可能となっています。計画的な植林事業に基づいた木材資源を有効に活用することは、CO2の抑制・地球温暖化防止にもつながっていくものだと考えています。

③紙の仕入れ流通過程における効率化

製紙メーカーで抄造された用紙は、大型トラックで吉田印刷所まで運ばれてきます。トラックの積載量や在庫スペースの関係でその頻度は年間にするとかなりの回数にのぼります。

吉田印刷所では、輸送過程におけるCO2排出を少しでも減らすため、地産地消の考え方のもと、なるべく近くの製紙工場から紙を仕入れるようにしています。輸送距離と時間を短くすることで輸送時のCO2排出削減に貢献しています。

④CO2ゼロ・エネルギーの活用

また、吉田印刷所では再生可能エネルギーの活用に積極的に取り組んでいます。2021年から本社社屋屋上に太陽光発電パネルを設置して発電を行っています。

発電量が多い春~夏には、本社工場の電力使用量の内、20~30%を太陽光発電パネルで発電された再生可能エネルギーにより賄っています。

株式会社吉田印刷所 本社工場を上から撮影(奥に太陽光発電パネルを設置)
株式会社吉田印刷所 本社工場を上から撮影(奥に太陽光発電パネルを設置)

再生可能エネルギーについての詳細情報

また、取引先の製紙メーカーでは、パルプ製造過程で発生する「黒液」を発電用燃料として無駄なく活用し、さらに、商品にならないさまざまな廃棄物も発電用燃料として最大限活用することで、2024年度のCO2ゼロ・エネルギー※の比率は71%に達しています。

※黒液などのバイオマス燃料や廃棄物燃料由来のエネルギーのこと

⑤ヤレ紙の100%リサイクル

薬袋を製造する工程では、多くのヤレ紙(断裁くずや検品で除外された商品にならないもの)が発生します。これらはすべて工場内で回収され、専門のリサイクル業者に引き渡されています。

まとめ

このように、吉田印刷所では製品の製造過程におけるさまざまなポイントにおいて「持続可能性」を意識した取り組みを行っています。こうしてお客様のお手元に届けられた薬袋は、最終的にお客様の手により「古紙」としてリサイクルごみに出していただくことにより、ライフサイクル全体において「紙製薬袋は環境にやさしい」と言えるようになります。