印刷会社へカタログ印刷の見積もり依頼をして提出されたお見積もり書を見てこんな経験をしたことはないでしょうか。

  • 印刷費と送料が一式になっていて内訳がわからない
  • 細かく書いてある個々の項目の意味がわかっていない
  • 実はなんとなく受け取ってしまっている


印刷会社の料金設定は会社それぞれですが、わかりにくいカタログの見積もり明細について、ポイントを少し知るだけでも理解度は大きく変わってきます。

今回は、カタログ印刷の見積りの項目について特にわかりにくい「印刷費用」についての解説と、見落としがちな「送料」の考え方について2回に分けて説明しています。

印刷費用については以前解説しましたので、こちらをご覧ください。


今回は送料について解説します。

今後、見積もり書を確認する際の参考にしてくださいね。


送料を最初は考えていない?

どの分野においても見積もり書は扱う案件のスケールが大きくなるにつれ、発注先とのやり取りも増える傾向にあると思います。

カタログ印刷においても規模の大きいカタログでは、最終まで何パターンも見積もりを貰うことは良くあります。


そんな中でも、意外と(?)最後まで決まらないもののひとつが「送料」です。

どこに送るか、何か所に送るか、一括納品か分割納品(分納)か、など納品に関わる情報収集は各部署への連絡が必要で手間と時間がかかります。カタログ制作中には忙しくてそこまで気が回らず、後回しとなり結果的に送料が最後の最後まで確定しない、という経験をされた方もいるのではないでしょうか。


たかが「送料」なのですが、条件次第で概算額と最終の見積もり額で大きく乖離することもあるので、実は油断できない項目なのです。

画像:見積書のイメージ
見積書のイメージ

送料は何によって決まるのか

送料は一体どうやって決まっているのでしょうか。

物流には様々な配送方法がありますが、基本的には5つの項目から決定されます。

  • 梱包の箱のサイズ
  • 梱包の箱の重さ
  • 梱包の箱の数(パレットの数)
  • 納品までの日数
  • 納品先までの距離
画像:運搬トラックのイメージ
運搬トラックのイメージ

運びやすい形とスケジュール

印刷物は基本的には箱詰めの梱包をされて発送されます。

この箱のサイズは大きければ多く印刷物が入り、箱の数は少なくて済みますが、箱の重さは物流業者によって制限があります。またサイズが大きくなると、配送の難易度が高くなったり、別の方式での配送に変更しなければならなくなったりと、無制限にサイズを大きくすることはできません。

納品までの日数を短くすることや時間指定を希望する場合は、配送方法が高速で配送品質の高いものを選択しなくてはならず、その分コストアップにつながります。


お客様が印刷物をどう使うか、保管するかによって、最適な納品形態は異なりますが、配送のしやすさやスケジュールによっては、コストを抑えられる要素があるということです。


人手不足や働き方改革による影響

さらに、昨今の社会情勢も関わってきます。

物流業界における人手不足や労働環境改善への取組みについては、ネット通販問題を中心に盛んに取り上げられ、多くの方がご存知のことでしょう。この問題は印刷物の発送についても、影響が出てきています。

例えば、わかりやすいところでは送料の値上げが行われたり、配達の時間が掛かるようになったり、待機時間の解消のために出荷時間の厳格化が求められたりと、以前とは異なる要請・要望が増えてきています。これらの要請・要望により、コストやスケジュールに影響が出ています。

画像:倉庫
倉庫に山積みになる荷物

隠れたコスト

完成した製品である印刷物を倉庫などへ一括納品し、その後、使用するさまざまな場所へ発送するというパターンが多くあります。これは物の流れとしてはわかりやすく、また管理もしやすい面があります。

しかし、物を動かす際には、当然ですが費用と時間が必要です。

倉庫などに納品され、その後に別の営業所などへ移動させるための送料は、その印刷物の納品とはタイミングがずれていたり、管理部門が印刷物の発注部門と異なったりするために、印刷費用とは別項目として考えられることが多いのですが、実は倉庫の管理・運用に掛かる費用も含めると、かなりコストが掛かっています。これらは隠れたコストとなっているので、注意が必要なのです。


この隠れたコストの問題について、他社様になりますが、アイリスオーヤマ株式会社では「運賃をシビアに見積もり、『納品してみたら赤字になった』をなくす」として、送料や保管費を販売管理費(販管費)に計上せず、製造原価にそれらの費用を加えた販売原価で管理しています。公式ページでは以下のように説明されています。

一般的に運賃や保管費は販管費として計上されますが、当社は単品の製造原価に運賃などを加えた販売原価を用いて単品利益計算をしています。製品は原材料費、人件費、設備費など製造費用に加え、予め運賃や保管費も細かく計算し開発されます。製造原価は黒字、しかし納品してみたら赤字だった…ということはあり得ないのです。

第十二話 国内体制の強化、全国配送網の確立 | アイリス物語(アイリスオーヤマ)


また、メディアでもアイリスオーヤマ株式会社の送料の扱い方に注目しており、以下のように販売(使用)されずに眠っている倉庫在庫が利益を圧迫することについて解説されています。

アイリスオーヤマならではの物流に対する考え方として、まず挙げられるのは配送費の扱いだ。

配送費は販管費として全体で管理するのが一般的だが、同社では、管理会計上、製造原価扱いにしており、どの商品に配送費がいくらかかっているのかが明らかになるようにしている。

こうなっていると現場でどんなことが起こるかというと、小売店から実際に受注のあった量以外には極力、製品在庫をもたなくなる。余分に倉庫在庫をつくってしまうと、売上げは計上されないのに、原価だけが計上されることになり、管理会計的には利益を押し下げることになってしまうからだ。

アイリスオーヤマだけが「ヒット商品」を連発できる必然的理由(角井 亮一) | マネー現代(講談社)
画像:トラックが運ぶ様子
トラックが運ぶイメージ

印刷物はお客様の手元に届いて初めて意味のあるものになるので、届くまでは売上を生むことのない仕掛かりの状態と言えるでしょう。このため、印刷物を製造して納品するまでのコストを一体化して考えるべきです。

そうした中、上昇する送料を抑えるための手段のひとつとして「直送」を選択されるケースが増えてきています。

印刷会社にもよりますが、一括納品を見直して、各指定の場所(例:営業所など)へ指定部数を直接納品(直送)といった細かな出荷の対応が可能であれば、印刷物の自社倉庫から指定場所への転送コストや時間が軽減できるので、トータルのコスト削減や時間短縮に繋がることもあります。

時間短縮ができることで、最終的な納期が延ばせる可能性もあります。納期が延びれば、印刷会社への校了連絡も少しだけ先に延ばせて、より制作や確認の時間を確保できるなどの副次的な効果も見込めるかもしれません。(印刷会社的には校了が早いことに越したことはありませんが…)



2回に分けて紹介してきた「印刷費用」と「送料」ですが、ちょっとした工夫や方法を変えることで、コストやスケジュールが変わってきます。


印刷会社によって対応の違いがありますので、担当の営業へ相談と確認をすることをおすすめいたします。

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