Illustrator CS6/CCでは、Illustrator CS5以前と特色の初期設定が変更されています。
このため、特色の設定を合わせないと、Illustrator CS5で作成した時のものと、Illustrator CS6/CCで作成した時のもののカラーが大きく違ってしまう場合があります。
この問題について解説します。
Illustrator CS6/CCの特色の初期設定
Illustrator CS6/CCではスウォッチパネルのメニューから「特色」を選択します。
すると、以下の「特色オプション」ダイアログが表示されます。
製造元が推奨する特色のカラー変換は「指定されたブックのLab値を使用」が選択されています。
Illustrator CS5までの特色の初期設定
Illustrator CS5以前ではスウォッチパネルのメニューから「特色」を選択すると、以下の「特色オプション」ダイアログが表示されます。
製造元が推奨する特色のカラー変換は「プロセスブックのCMYK値を使用」が選択されています。
特色オプションの設定が異なるとどうなるのか
特色のカラー変換が「指定されたブックのLab値を使用」「プロセスブックのCMYK値を使用」と異なるとどのような問題が発生するのでしょうか。
「実際の印刷はCMYKのプロセスカラー印刷」であり、特色を使用しないことを前提とします。
「実際の印刷はCMYKのプロセスカラー印刷」であっても、スウォッチパネルのDICやPANTONEなどの特色をカラーパレット代わりに使用している方は少なくありません。
DICの特色を使用して以下のデータをIllustrator CS6で作成しました。
画面はスウォッチパネルの特色オプションの「製造元が推奨する特色のカラー変換」の項目で「指定されたブックのLab値を使用」が選択されている状態です。つまりIllustrator CS6/CCの初期設定です。
3列並んでいますが、一番左の列の①は特色オプションの「製造元が推奨する特色のカラー変換」の項目で「指定されたブックのLab値を使用」が選択されている状態で、メニューから「編集」→「カラーを編集」→「CMYKに変換」にて特色をCMYK変換したデータです。
真ん中の列は特色データのままです。
一番右の列の②は特色オプションの「製造元が推奨する特色のカラー変換」の項目で「プロセスブックのCMYK値を使用」が選択されている状態で、メニューから「編集」→「カラーを編集」→「CMYKに変換」にて特色をCMYK変換したデータです。
ピンクの三角がある6行目の黄色の特色は左の2列は濁った黄色(特色も濁った黄色になっている)になっていますが、一番右の列はスッキリとした黄色になっています。
他の行も1・2列目と、3列目は色が異なりますが、全体的な傾向としては3列目のカラーは濁りが少なく、はっきりしたカラーになっていることがわかります。
逆のパターンを作成してみました。画面はスウォッチパネルの特色オプションの「製造元が推奨する特色のカラー変換」の項目で「プロセスブックのCMYK値を使用」が選択されている状態です。つまりIllustrator CS5までの初期設定です。
先程と異なり、ピンクの三角がある6行目の黄色の特色は左の1列は濁った黄色になっていますが、右側の2列はスッキリとした黄色になっています(特色もスッキリとした黄色になっている)。
つまり、同じ特色でも「製造元が推奨する特色のカラー変換」の設定が異なることで、見た目が変わると共に、最終的にCMYKのプロセスカラー印刷をするために特色をCMYK変換した結果も異なるということになります。
どういった問題が考えられるか
この問題はどういった問題を引き起こすのでしょうか?
Illustrator CS5以前のIllustratorでデザインしていて、会社やブランドのロゴのカラーがDICなどの特色で指定されて、データ作りを特色で設定している例を考えてみます。
Illustrator CS5からIllustrator CS6/CCへバージョンアップして、新規ドキュメントの作成で、同じようにロゴのカラーを特色で指定した場合、初期設定のままだと、プロセスカラーへ変換後のカラーがIllustrator CS5以前と異なるので、印刷結果が異なります。
同じ特色を指定しているはずなのに、印刷結果が異なるという問題を引き起こすことになります。
Illustrator CS5以前のデータをIllustrator CS6/CCで開いた場合は?
Illustrator CS5以前のデータをIllustrator CS6/CCで開いた場合、「製造元が推奨する特色のカラー変換」は変更されるのでしょうか?
これは大丈夫です。設定は変更されません。
このため、特に注意が必要なのはIllustrator CS6/CCで「新規ドキュメントの作成」をする場合なのです。
特色のカラーの違いの問題を発生させないためにはどうすれば良いか
最終的にCMYKのプロセスカラーで印刷する場合は、DICなどのカラーを使用して作業しないことが重要です。
また特色データをきちんとCMYKのプロセスカラーへ変換せずに、特色データが残ったままだと、印刷結果に意図しない結果を発生させる場合も多くあります。
基本はCMYKのプロセスカラーだけで制作することをお薦めします。
この問題の詳しい情報は以下のページをご覧ください。
関連情報・参考資料
- 参考:Adobe CS6における特色指定(出力の手引きWeb・大日本スクリーン製造)
- Illustratorで制作途中に特色をカラーパレット代わりに使うと危険な理由(DTPサポート情報)