概要
このページはPDFのバージョンについての説明を掲載しています。
PDFのバージョンは様々なバージョンがあり、用途に応じた適切なバージョンを使用しないと、表示や印刷において意図しない結果になる場合がありますのでご注意ください。
PDFのバージョンとは
PDF誕生の元となるPostScriptが1984年にAdobe Systemsから発表されました。
そのPostScriptの発表から9年後の1993年6月15日にAdobe SystemsよりAdobe Acrobatの製品が発表されるのと同時にPDFの第1版の仕様が公開されました。
その後、現在に至るまで継続的に改良・開発が行われ、バージョンが更新されるたびに新しい機能を取り込んでいます。
このため、PDFのバージョンに留意しておかないと、制作者の意図とは違うPDFが作成されてしまうことも少なくありません。
またPDFデータをほかの人に渡す場合にも、PDFのバージョンを意識しておかないと、意図した通りにPDFが表示されない等の問題が発生する場合があります。
PDFのバージョンを注意することでエラーを回避できることも多くありますので、PDF作成時・作成後にPDFのバージョンを確認して、制作者の意図したデータになっているかどうかをご確認ください。
PDFのバージョン毎の特徴
以下は各PDFのバージョンによる特徴です。
(Acrobat 7のマニュアル、Acrobat X Proのマニュアルを参考にしています)
PDF1.2 (Acrobat3.0) |
PDF1.3 (Acrobat4.0) |
PDF1.4 (Acrobat5.0) |
PDF1.5 (Acrobat6.0) |
PDF1.6 (Acrobat7.0) |
|
---|---|---|---|---|---|
最大対応サイズ |
約1143mm (45インチ) |
約5080mm (200インチ) |
約5080mm (200インチ) |
約5080mm (200インチ) |
約318000000mm (15000000インチ) |
スムーズシェーディング |
× 画像に変換されます |
○ 高品質なグラデーション作画が可能です |
○ 高品質なグラデーション作画が可能です |
○ 高品質なグラデーション作画が可能です |
○ 高品質なグラデーション作画が可能です |
マスクされた画像 |
× 正確に表示・印刷されません |
○ 正確に表示・印刷されます |
○ 正確に表示・印刷されます |
○ 正確に表示・印刷されます |
○ 正確に表示・印刷されます |
日中韓フォントの埋め込みの対応 (フォント埋め込みを許可されたフォント) |
× |
○ |
○ |
○ |
○ |
OpenTypeフォントのサポート |
× |
× |
○ |
○ |
○ |
透明効果のサポート |
× |
× |
○ |
○ |
○ |
レイヤーのサポート |
× |
× |
× |
○ |
○ |
カラーのサポート |
- |
8チャンネルのDeviceNカラースペースをサポート |
8チャンネルのDeviceNカラースペースをサポート |
最高31チャンネルまでのDeviceNカラースペースをサポート |
最高31チャンネルまでのDeviceNカラースペースをサポート |
JPEG2000形式での画像圧縮のサポート |
× |
× |
× |
○ |
○ |
印刷用途ではPDF/X-1a:2001ではPDF 1.3(Acrobat 4.0)形式、PDF/X-4:2008ではPDF 1.4(Acrobat 5.0)形式、InDesign CS5.5から採用されるPDF/X-4:2010ではPDF 1.6(Acrobat 7.0)形式が利用されます。
PDF/X-4とPDFのバージョンの関係
株式会社SCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズのRIP開発者のひとりである松久剛さんがTwitterでツイートされていました。
ツイートによれば、レイヤーを活かすためにPDF1.6のバージョンに変更されたようです。
InDesign CS5.5、PDF/X-4の書き出しに変更があります。PDF/X-4:2008からPDF/X-4:2010に変更。従来のjoboptionsは使えません。PDF/X-4:2010と書くといかにもISOの規格の様に見えますが、これはAdobeの都合の名前です。
— Takeshi Matsuhisa (@tmatsuhisa) 2011年4月11日
PDFのバージョンが変わります。CS5まではPDF1.4がPDF/X-4のベースバージョン。これがCS5.5ではPDF1.6がPDF/X-4のベースバージョンになります。レイヤーが活きたまま保存できるので、バージョニング運用が可能になるのがメリット。
— Takeshi Matsuhisa (@tmatsuhisa) 2011年4月11日
PDFのバージョンとアプリの挙動
なお、PDFのバージョンとIllustratorやInDesignなどのアプリの挙動が一致しているわけではありません。
例えば、Illustratorで227インチ×227インチのアートボードを作成して、PDF/X-4:2010(PDF1.6)で保存しようとすると、PDF1.6の規格上では227インチのPDFを作成することは可能なのですが、「このページのサイズは範囲外です」(Illustrator 23.1の場合)というエラーが表示されてPDF保存ができません。※PDF1.7で保存しようとしても同じエラーが表示されます。
Illustrator 24.2にてアートボードを227.6インチ以上のサイズで作成した場合は、PDF/X-4:2010(PDF1.6)で保存してもエラーは表示されません。
しかし、Illustrator 24.2でもアートボードが227.6インチ未満のサイズのドキュメントをPDF/X-4:2010(PDF1.6)で保存しようとすると、Illustrator 23.1と同様の「このページのサイズは範囲外です」というエラーが表示され、PDF保存ができません。
関連情報・参考資料
- PostScript(Wikipedia)
- Adobe PDFの歴史
- Adobe Printing Technologies -About PostScript 3(Adobe)
- Adobe Acrobat Pro * PDF の互換性レベル(Adobe)
- Takeshi Matsuhisa: InDesign CS5.5、PDF/X-4の書き出 ...(Twitter)
- Takeshi Matsuhisa: PDFのバージョンが変わります。CS5まではPDF1 ...(Twitter)
- 大きなカンバスサイズ | FAQ と既知の問題(Adobe)
- アドビ、PDF誕生30周年の節目に、6月15日を「PDFの日」に制定! | アドビ株式会社(PR TIMES)