胆管がん問題への取り組み

胆管がん問題への取り組み

2012年、各メディアで報道されたように、大阪市の校正印刷工場で多数の従業員・退職者と胆管がんとの関連性が高いとの報道がされ、その後、他の都道府県においても胆管がんの発症事例が報告されました。

この件に関してのまとめと、吉田印刷所の取り組みについてお伝えします。

そもそも胆管がんとは?

胆管

胆管は肝臓から十二指腸につながる管の部分で、肝臓で作った胆汁を十二指腸に運びます。ここにできるのが「胆管がん」です。

発症初期には自覚症状がありませんが、その後以下のような初発症状で発症に気づきます。

  • 黄疸:皮膚や眼球の白目の部分が黄色くなります。
  • 白色便:便の色が白っぽいクリーム色になります。
  • 黄疸尿:尿の色が濃く(茶色っぽく)なります。
  • 掻痒(そうよう)感:皮膚にかゆみがあらわれます。

胆管がんは国内で年間1万人以上が発症しています。中でも男性が多く、その発生率は年齢を増すごとに高くなっていきます。

印刷業と胆管がんの関連性は?

問題の原因の可能性として、作業時に使われていた洗浄剤の有機溶剤に含まれている「ジクロロメタン」と「1、2ジクロロプロパン」の2つの化学物質に原因があるのではないかと指摘されています。

ただし、これらの化学物質は動物実験による発がん性は確認されていますが、人体への発がん性に関してはまだ確認されていないので、因果関係があるとは断言できないようです。

また、作業所内の空調・換気の設備に問題があったこと、さらに従業員に防毒マスクを支給していなかったなど劣悪な作業環境であったことも判明しました。

[用語]校正印刷工場

大量印刷の前に少部数を印刷し誤植や発色などを確認する「校正印刷」を専門とする工場です。

印刷工場といっても「校正」の為の印刷なので印刷機は通常の物と違い低速で工程も手作業が多いのが現状です。また、校正刷りということは種類も多く、少しづつ刷るため刷版を頻繁に換えなければいけません。その為に、機械のインキを落とす必要があるため、有機溶剤を含む洗浄剤の使用量が一般の印刷工場に比べて頻度が高いといえます。

当社の安全衛生管理に対する取り組み

吉田印刷所では従来より環境・安全両面から有機溶剤についても対処してまいりました。

チェックシート
  • 製品安全データシート(MSDS)の取得・保管
  • 洗浄剤等の保管場所の特定及び表示
  • 洗浄剤等の容器の密封、使用済みウェスの密封保管
  • 防護具の整備
  • 有資格者である有機溶剤作業主任者の配置

他にも胆管がん腫瘍マーカー検査の実施等、常に情報収集・環境改善を行い、従業員が安心して働ける職場、お客様が安心してご利用できる会社を目指していきます。

有害性のある溶剤は使用していません

「有機溶剤中毒予防規則」(労働安全衛生法に基づいて定められた安全基準。以下「有機則」)では、有機溶剤について有害性の強いものから順に第1種、第2種、第3種と規定されています。

当社では以前より第1種有機溶剤の使用を控えていましたが、2014年5月より有機規で対象となる全ての有機溶剤の使用を停止しました。現在は有機則に該当しない、より安全な溶剤のみを使用し、従業員が安心して働ける職場を構築しています。

溶剤停止時のお知らせ

洗浄回数を増やさないための取り組み

疑似特色

当社はプロセスカラー印刷を主体としていますが、お客様から特色あるいは単色で印刷したいと依頼されるケースがあります。

しかし、これらの色指定の印刷が作業工程に入りますとプロセスカラーの印刷環境との相違が発生し、印刷機を洗浄する回数が増加します。

そのため、当社はカラー印刷の環境で特色印刷を行う方法として特色をプロセスカラーに変換し、これら変換後の各色を重ね合わせて印刷し、疑似的に特色の再現性をもたせる「疑似特色」にチャレンジしています。


この胆管がんの問題で印刷業界に対して危険な業界という印象を持ち、不安に思われた方もいらっしゃるはずです。

今回この問題を取り上げたのは、これを単に校正印刷工場だけの問題ではなく、業界全体の問題としていかなければ業界に対する信用は得られないと思ったからです。これからも、環境に配慮した取り組みや商品を通じ、お客様が安心してご利用いただけるよう努めて参ります。